日々の生活の中の出来事を題材にした前店主の短歌(平成28年作)です。
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自治会の 還暦過ぎた 八人衆 町内駅伝 われらがチーム スターターの ピストルの音 高らかに 初老の選手は 最後尾を行く

OBは 静かに見詰め 応援す 若き勇姿の 消防団員 消防の 特別点検 堂々と わが青春の 一ページを見ん

二つ鳴る 携帯のベル 静かなり 愛犬こまち 召されて行ったか モルヒネを 使いましょうと 獣医(いしゃ)は言う いよよ最後の 別れとなるか

玄関の 見かけぬ箱から 猫の声 妻はするらしい わが家の友に 捨て猫に ミルク与える 妻ありし われはその猫 見放していた

盆棚に 先祖代々 祀りし 家族の看守り ひたすら願う あの世への 番号札が あるような 施餓鬼法要 前から五番目

牛飼いと はたおり娘の ラブロマン 七月七日は 晴れのち曇り 短冊に 世界平和と 記す乙女 願い叶えて 七夕祭

頭上より 白き花びら はらはらと 一葉という 名札を付けて 一葉は 八重に咲きたり 桜花 この世に戻りて 艶やかにおり

つるつると うどん啜った その折に つゆはぷつんと 頬に跳ねたり 「そろそろ 冷たいうどんに しましょうか」 妻のつぶやき 春のおとずれ

蔵の街を 妻と歩けば 人込みに セーラー服の あなたに会える 如月の 頬突く風も また楽し 蔵の街ゆく 思い出探し

雪だるま 湯舟に浮かべ はしゃぎおる ふたりの女孫は わが家の宝 ぬくぬくの 布団跳ね上げ 窓の外 白銀の朝 女孫と楽し